イオン

【イオンの生成】

 原子の多くは,安定な電子配置をしておらず単独では存在できない。原子は安定化するため,@ いくつかの原子どうしで結合し,〔 分子 〕になる。A 自身がもっている電子を放出したり,外から受け取ったりして,安定な電子配置(18族の原子と同じ電子配置)をとる。Aの方法によって生成した粒子が〔 イオン 〕である。イオンは,負の粒子である電子を放出したり,受けとったりすることによって生成するので,正の電気を持ったイオン(陽イオン)や負の電気を持ったイオン(陰イオン)がある


陽イオン

原子が安定な電子配置(最も原子番号が近い18族の原子と同じ電子配置)になるために,自身がもつ電子を放出して電気的に〔  〕になった粒子が陽イオンである。

例えば,原子番号が11Na12Mgは原子番号が10Neと同じ電子配置になるために電子を放出する。

 
 

陰イオン

原子が安定な電子配置(最も原子番号が近い18族の原子と同じ電子配置)になるために,電子を受け取って電気的に〔  〕になった粒子が陰イオンである。

例えば,原子番号が17Cl16Oは原子番号が18Arと同じ電子配置になるために電子を受け取る。

 
 

イオンの価数(+,−の数)とイオン式

 イオンの+,−には+,2+,3+,−,2−,3−などいくつかの数値がある。これを価数という。+,2+,3+のイオンであれば,それぞれ1価,2価,3価の陽イオンという。また,−,2−,3−であれば,それぞれ1価,2価,3価の陰イオンという。価数はその原子によってだいたい決まっている。イオンを示す化学式をイオン式という。元素記号の右上に小さく2+や2−などをつけ,Ca2S2のように示す。

 

例)NaNa原子が電子を〔 1 〕個〔 放出して 〕できたイオン。

  Mg2Mg原子が電子を〔 2 〕個〔 放出して 〕できたイオン。

  Cl Cl原子が電子を〔 1 〕個〔 受け取って 〕できたイオン。

  O2 O原子が電子を〔 2 〕個〔 受け取って 〕できたイオン。

 

 結果的に〔 金属 〕の原子と〔 水素 〕原子は陽イオンに,〔 非金属 〕の原子は陰イオンになる。

 

例題 次の原子がイオンになったとき,陽イオンになるものはどれか。

 @ H  A Ag  B O  C S  D Cl  E Cu  F Na  G Al

 

    陽イオンになるものは,金属の原子と水素原子   @,A,E,F,G

 

例題 次のイオンをイオン式で示せ。

(1) カリウムイオン(カリウムK原子が電子を1つ放出してできたイオン)

(2) アルミニウムイオン(アルミニウムAl原子が電子を3つ放出してできたイオン)

(3) フッ化物イオン(フッ素原子Fが電子を1つ受け取ってできたイオン)

(4) 硫化物イオン(硫黄S原子が電子を2つ受け取ってできたイオン)

 

(1) K  (2) Al3+  (3) F  (4) S2

 

単原子イオンと多原子イオン

これまでに学習したイオンは,1つの原子が自身の電子を放出したり,外から受け取ったりしてできたもので,これらを〔 単原子イオン 〕という。イオンにはこの他,いくつかの原子が結合し,さらに電子の放出・受け取りが起こってできるイオンがあり,これらを〔 多原子イオン 〕という。

 
 

多原子イオンの例 NH4(アンモニウムイオン)とSO42(硫酸イオン)

  NH4 … N原子〔 1 〕個とH原子〔 4 〕個が結合して,全体で〔 1+ 〕

  SO42− … S原子〔 1 〕個とO原子〔 4 〕個が結合して,全体で〔 2 〕

 

主なイオン(主なイオンのイオン式は覚えよう)

 
 

ポイント:

・太字は多原子イオン。

(大文字が2つ以上のものは多原子イオンになる。2文字でもNaなど大文字と小文字のものは1つの原子なので,単原子イオン)

 ・名称は,陽イオンは〔 〜イオン 〕,陰イオンは〔 〜化物イオン 〕か〔 〜酸イオン 〕。

 ・Fe2Fe3のように同じ原子からできているイオンで,価数が異なるものが存在するときは,名称に(U),(V)などがつく。

 

例題 次の空欄に適当な言葉や数値を入れよ。

原子の構造は,原子核を中心にしてその周りに電子が存在している。原子核は,正の電気をもっている( ア )と電気をもたない( イ )からできている。例えば,ヘリウム原子は,電子を2個もっていて,原子核には( ア )が( ウ )個と,( イ )が2個ある。

原子が電子を失うと( エ )イオンになり,電子を受け取ると( オ )イオンになる。例えば,銅原子が電子を( カ )個失うと銅イオンCu2になり,塩素原子が電子を( キ )個受けると( ク )イオンClになる。

 

()  陽子  () 中性子  () 2  () 陽イオン  () 陰イオン  () 2  () 1個  () 塩化物

Heは原子番号2→ 陽子2個 → 電子2

        

例題

 次のイオンはどのように生成されたイオンか,原子名・原子の数・電子の授受について触れ説明せよ。

(1) S2  (2) Fe3  (3) NH4  (4) PO43

 

(1) 硫黄原子1つが電子を2つ受け取った。

(2) 鉄原子1つが電子を3つ放出した。

(3) 窒素原子1つと水素原子4つが結合して,電子を1つ放出した。

(4) リン原子1つと酸素原子4つが結合して,電子を3つ受け取った。

 

【イオンからなる物質】

 物質には鉄Feや銅Cuなどの金属のように〔 原子 〕が集まってできたもの,水H2Oや二酸化炭素CO2のように〔 分子 〕が集まってできでものがあった。そして,今回学習しているイオンが集まってできている物質もあり,塩化ナトリウムNaCl塩化カルシウムはCaCl2がその例である。

 

陽イオンと陰イオンの結合

 陽イオンと陰イオンは電気的に+と−なので,両者の間には電気的な引力が生じる。この引力を〔 静電気力 〕または〔 クーロン力 〕という。このため,陽イオンと陰イオンは結合することができる。この結合を〔 イオン結合 〕といい,この結合によってできた物質を〔 イオンからなる物質 〕という。

 電気の+,−は11で引き合う(打ち消し合う)。例えば,2+に対しては,〔 2 〕を1つか,〔 1 〕を2つが必要になる

 
 

例題 

次の陽イオンと陰イオンの結合を上の図のように示せ。

(1) アルミニウムイオンAl3と酸化物イオンO2

(2) ナトリウムイオンNaと硫化物イオンS2

 
 

イオンからなる物質の化学式と名称

 陽イオンと陰イオンは,電気的な引力による結合なので,+とーの数が合うように,それぞれのイオンの数を考えて結合させる

 

1)カルシウムイオンCa2と塩化物イオンCl

2+と1−なので,Ca2〔 1 〕つとCl〔 2 〕つで結合する。

 

 化学式〔 CaCl2 〕

「+の数=−の数」なので,2+,−は消える(付けない)。

     「陽イオンの原子,その数,陰イオンの原子,その数」の順に書く。

      (数は元素記号の右下に小さくつける)

 

名称〔 塩化カルシウム 

「陰イオン,陽イオン」の順に言う。

     (結合してイオンではないので「イオン」,「物イオン」,は付けない

 

2)ナトリウムイオンNaと硫酸イオンSO42の結合

 

  1+と2−なので,Na2つとSO421つで結合

  Na2SO4 硫酸ナトリウム

 

3)カルシウムイオンCa2と水酸化物イオンOHの結合

 

  2+と1−なので,Ca21つとOH2つで結合

  Ca(OH)2 水酸化カルシウム

  OHのような多原子イオンを2個,3個にするときは( )でくくる。

  (OH2とすると,Hだけが2つになってしまう。)

 

例題

次の陽イオン(@〜I)と陰イオン(J〜Q)の組合せでできる物質 (1) (18)の化学式と名称を答えよ。

@ ナトリウムイオンNa  A カリウムイオンK  B 銀イオンAg  C アンモニウムイオンNH4+  

D マグネシウムイオンMg2 E カルシウムイオンCa2  F バリウムイオンBa2  G 銅(U)イオンCu2 

H アルミニウムイオンAl3  I 鉄(V)イオンFe3

 

J 塩化物イオンCl  K 水酸化物イオンOH  L 硝酸イオンNO3  M 酸化物イオンO2  

N 硫化物イオンS2−  O 炭酸イオンCO32  P 硫酸イオンSO42  Q リン酸イオンPO43 

 

(1) AとK  (2) BとL  (3) @とM  (4) CとJ  (5) HとK  (6) DとJ  (7) DとM  

(8) CとP  (9) EとP  (10) FとO  (11) GとL  (12) HとJ  (13) GとN  (14) HとM  

(15) IとP  (16) AとQ  (17) EとQ  (18) HとQ  

 

 

(1) KOH 水酸化カリウム  (2) AgNO3 硝酸銀  (3) Na2O 酸化ナトリウム  

(4) NH4Cl 塩化アンモニウム  (5) Al(OH)3 水酸化アルミニウム  

(6) MgCl2 塩化マグネシウム  (7) MgO 酸化マグネシウム

(8) (NH4)2SO4 硫酸アンモニウム  (9) BaSO4 硫酸バリウム  (10) CaCO3 炭酸カルシウム 

(11) Cu(NO3)2 硝酸銅(U)  (12) AlCl3 塩化アルミニウム  (13) CuS 硫化銅(U)  

(14) Al2O3 酸化アルミニウム  (15) Fe2(SO4)3 硫酸鉄(V)

(16) K3PO4 リン酸カリウム  (17) Ca3(PO4)2 リン酸カルシウム  (18) AlPO4 リン酸アルミニウム